糖尿病を予防するには?自分でできる生活習慣の改善方法5選
糖尿病は、現代社会で増加し続けている疾患の一つです。とくにメタボリックシンドロームにあてはまる方は糖尿病になるリスクが高く、30代から40代の男性や女性にとって、大きな問題となっています。しかし、心配するだけではなく、具体的な行動を起こすことが大切です。
この記事では、糖尿病の基礎知識と、自分でできる糖尿病予防のための生活習慣の改善方法を5つ紹介します。
どれも今すぐに始められる内容です。ぜひ参考にしてください。
目次
糖尿病とは
糖尿病とは、血糖(血液中のブドウ糖)が基準値を超えたことが原因で、眼や腎臓、血管などに合併症が起きやすくなる状態のことです。
膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが適切に機能しなくなることで、糖尿病は発症します。
糖尿病はおもに以下の4つに分類されます。
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
- その他の特定の機序や疾患によるもの
- 妊娠糖尿病
1型糖尿病は、若年者でやせ型の方に多く発症し、急激に症状が現れます。自己免疫疾患などによりインスリン分泌細胞が破壊されるため、インスリンの自己注射が必要です。
2型糖尿病は中高年の肥満の方が多く、自覚症状が現れないこともあり、進行に気がつきにくい型です。遺伝的要因に加えて、過食や運動不足などの生活習慣が重なって発症する場合も多いので注意してください。
上記分類の中でも、2型糖尿病の患者数が最も多いです。全成人人口の約6人に1人(約1870万人)が、糖尿病またはその疑いがあると推計されています。
糖尿病で腎不全になる?
糖尿病にかかり、血糖値のコントロールが適切に行われていない状態が続くと、神経症、網膜症、腎症といった細小血管合併症が順番に現れます。
糖尿病が原因で腎臓の機能が低下した腎症を「糖尿病腎症」といいます。早期のうちは無症状であることが多いため、症状の有無にかかわらず、糖尿病がある方には定期的に尿検査や血液検査が必要です。
糖尿病性腎症は以下の5つのステージに分類されます。アルブミンは身体に必要な栄養素で、正常な腎臓からは尿に漏れることはありません。尿に漏れ出るアルブミンの量が多いほど腎臓が傷んでいることになります。4期以降では腎機能が低下し、腎不全にいたります。
- 1期(腎症前期)
尿検査で異常値が測定される前から、腎臓に病変が現れる。
- 2期(腎症早期)
微量のアルブミンが濾過(ろか)しきれず、尿に漏れ始める。
- 3A/3B期(前期顕性腎症/後期顕性腎症期)
3A:尿に漏れるアルブミンが明らかになる(蛋白尿)。
3B:腎機能の低下が見られはじめる。
- 4期(腎不全期)
腎機能の悪化が進む。
- 5期(透析療法期)
透析療法が必要になる。
1期(腎症前期)から2期(腎症早期)の進行は遅く10年〜20年かかります。しかし、3期からの進行は速く、2年〜5年で5期(透析療法期)にいたります。
そのため、進行が遅く症状が軽い2期の段階までに血糖管理(血糖値を適切な範囲に維持すること)を行うことが重要です。3期以降は症状の進行が早く、血糖管理による進行の抑制は難しいとされています。そのため、腎症の治療には早期診断が鍵となります。
糖尿病を予防するためには
糖尿病の予防には、症状の進行にあわせて3つの段階があります。
- 1次予防:生活習慣を見直して、糖尿病の発症を防ぐ
- 2次予防:血糖値コントロールで、発症しても症状の進行を防ぐ
- 3次予防:合併症の発症をくい止める
以下では、それぞれの段階で共通する、自身で実践できる予防法を5つ紹介します。
適正体重を維持することが大切
適正体重を維持することは、糖尿病を予防するうえで重要になります。肥満は糖尿病を引き起こす原因となるからです。
適正体重の維持には、自分の適正体重を理解することが第一歩になります。
計算方法は以下のとおりです。式にあてはめて、計算してみましょう。
【身長から自分の適正体重を計算】
身長(m) × 身長(m) × 22 = 適正体重(kg)
(例)身長1m75cmの方の場合
1.75×1.75×22=67.36
67.36kgが適正体重となります
また、肥満度を表す指標として用いられているBMI(Body Mass Index)も目安になります。計算方法は世界共通になりますが、肥満の判定基準は国により異なるのが特徴です。
日本ではBMI値25以上が「肥満」と分類されます。
計算式は以下のとおりです。
【BMI値は体重と身長から計算】
体重(kg) × (身長(m) × 身長(m)) = BMI値
(例)身長1m75cm、体重75kgの方の場合
75÷(1.75×1.75)=24.49
18.5以上25未満が「普通体重」になります。
「適正体重」のBMI値は22で、最も病気になりにくい状態です。
BMI値25以上の「肥満」に分類されると、糖尿病などの生活習慣病リスクが2倍以上になるので、25未満の値を目指しましょう。
運動習慣を身につけて
運動習慣は、糖尿病をはじめ生活習慣病や認知症のリスクを下げるといわれています。
血糖値をさげるおもな運動は「有酸素運動」と「筋力トレーニング」の2つです。一般的に有酸素運動が推奨されることが多いですが、どちらも同様の効果があるとされています。
有酸素運動を行うと筋肉への血流が増え、細胞はブドウ糖をより多く取り込むようになり、インスリンの効果を高めます。筋力トレーニングは筋力量を増加させ、インスリンの効果が高まります。最近の研究では、組み合わせることでより良い効果を発揮するとの報告もありました。
インスリンの効果が高まると、血糖値が下がりやすくなるため、血糖値のコントロールが容易になります。しかし、運動をやめてしまうと、インスリン効果は約3日間で失われていくため、運動習慣の継続が重要です。
健康的な食習慣がポイント
健康的な食習慣は血糖値の急激な上昇を抑えるため、糖尿病予防において重要なポイントです。
以下の4つを守ることが、健康的な食習慣のコツになります。
- 朝食、昼食、夕食を規則正しくバランスを考えて食べる。
- ゆっくり、よくかんで、腹八分目を守る。
- おやつやアルコールの摂取は適量を守る。
- 夜遅くや寝る前には食べない。
上記を習慣にして継続することは糖尿病の予防にとって大切ですが、続けることが難しい場合もあるでしょう。たまには好きなものを食べるなどの息抜きも、習慣化させるには必要かもしれません。その際に、「おやつ(間食)」や「アルコール」を上手に摂取できる目安を紹介します。
- おやつ(間食)は夕食後を避け、日中に食べる。
- だらだら食べずに、量を決めて食べる。(目安は80kcal)
- 間食後は家事をしたり、運動をするなど体を動かす。
- アルコールの摂取量は25g程度までにする。(日本酒1合、ビール500ml程度)
朝食、昼食、夕食の3食以外の間食やアルコール摂取は、体重が増えやすく、血糖コントロールも難しくなります。そのため、摂取するときは上記を参考に工夫しましょう。
歯と口腔の健康に気をつける
歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼすので、歯と口腔の健康に気をつけることは、糖尿病予防につながるとされています。
歯や口腔の健康と糖尿病は、一見すると関係がなさそうです。しかし、歯周病が悪化したした時にともなう化学物質がインスリンの効果を低下させるため、糖尿病の発症や進行を助長します。
歯周病の治療により、血糖コントロールが改善するといった研究成果も報告されているため、歯と口腔の健康には気をつけましょう。
禁煙をする
たばこは糖尿病の発症リスクを増加させることが、多くの国内外の研究により確認されています。生活習慣などの糖尿病にかかる要因をクリアしている場合でも、喫煙は2型糖尿病に1.4倍かかりやすいことが報告されています。そのため禁煙は、糖尿病予防に欠かせません。
喫煙が糖尿病のリスクを増加させるおもな要因は以下の2つと考えられています。
- 交感神経を刺激して血糖を上昇させる。
- 体内のインスリンの働きを妨げる。
さらに、喫煙は糖尿病の治療を妨げるだけでなく、糖尿病性腎症などの合併症のリスクも増加させます。そのため、糖尿病にかかっている方にも禁煙は重要な予防法の一つになります。
糖尿病を予防して健康な生活を
糖尿病は自覚症状がなく進行する怖い病気です。しかし、早い時期から予防を行うことでリスクを大幅に軽減できます。
5つの糖尿病の予防法は、日常生活の中で実践できる方法です。糖尿病のリスクを減らすために、今日から始めてみませんか。